学生のための起業家教育情報ポータルを作ろう

私が大学に奉職したのは2001年でした。1995年から始まったインターネットの普及と、ITベンチャーによるドッココムブームを経て、シリコンバレーの起業家教育が注目され、日本でも各地でビジネスプランコンテストが行われるようになっていました日本ベンチャー学会の設立は1997年で、まさに第三次ベンチャーブームの入り口に差し掛かっていました。

Web of Scienceという学術論文の検索をもちいて、著者キーワードにentrepreneur(起(企)業家)が含まれているものを検索すると以下のようになります(20220228現在)。これらほぼ英語論文ですが、2005年頃から急に論文数が増え始め、2018年から更に論文数が大きく増えています。これを見ても現在、entrepreneurが注目されていることが見て取れます。


この間、教育機関は変わったか?といえばそうではないでしょう。2000年頃にやっとベンチャー経営論や、起業家論といった科目が大学で開講され始めていますが、リスクマネー(起業家向けの投資)が少なかった時代は長く続き、今だに「起業することはリスクが高く収入が絶たれる可能性が高い」キャリアであり、相変わらず多くの学生や親御さんは「高偏差値大学に入学して、ホワイトで安定した著名企業」に入社することがゴールデンルートであるとして認識されているようにおもいます。なので現時点では起業家育成を主軸にすえた学部はまだまだ入学希望者を集めることは難しいように思います

いわゆる「起業家をつくりだす」社会的ニーズの発生は、掘り下げると非常に込み入った事情がありますのでここでは触れません。でも、起業家教育に関わってきた人間は、起業家教育が「起業したい人間を育てる」ことではなく、あらゆる状況のなかで「革新的なことを成す」態度の育成に関わるものであると認識しています。

20年ほど、結構真面目にゼミ活動を通じて人材育成に取り組んできました。しかし、いわゆるテキストブックを読み込む起業家教育は多くの場合「態度の育成」には繋がりません。そこにカリキュラム上の限界を感じていました。だから主にゼミで取り組んできたのは「研究」でした。これはまぁまぁうまく行ったように思います。一方で、コロナ禍をきっかけに「そろそろこういう講義形式のゼミはオワコンだなぁ」と思うようにもなりました。

ネットを探せば現役の起業家やエンジニア、投資家が発信する膨大な教育リソースがあります。大学に来なくても単なる知識はいくらでも得ることができます。では大学にできることはなにか?とずっと自問自答してきたように思います。

一方で、教育リソースがあれば、人は学ぶか?といえばそうでもありません。関心が喚起され、自律的に学び始めるというきっかけが必要です。そして、そのきっかけがあっても、インプットや体験を習慣化することができなければ、なかなか継続しません。学校に通うように、毎日時間を確保して習慣的に学ぶ機会を発生させることはやはり学びやすさに繋がります。

いろいろ考えた挙げ句、①なるべく長期インターンなどの形で現場に入る、もしくは②様々な起業家育成プログラムでいろんな人とであうことをきっかけとし、③様々な現場が内包する課題をみずから発見して、その解決策を自発的に考えるゼミにしていこうと思っています。

20年を経て、機は熟してきました。いま多くの起業家育成プログラムが様々なところで実施されるようになってきています。長期インターンシップもたくさんあります

でも実際にやろうとしてみると問題点がありました。どこでどんなプログラムが行われているのか?それをgoogleで探し回らないといけないのです。もう終わった古いプログラムも山程引っかかってきます。本当に面倒くさい。だから、自分のゼミ活動のために、まず京都の起業家教育情報のポータルサイトをつくろうとおもいました。これから行われる起業家教育プログラムの一覧と、その日時、場所、内容、申込先、主催者、料金などがわかれば、起業家教育に興味のある人が参加するハードルは下がるでしょう。そして、それをシェアする。多分、だれも損する人はいないはずです。

ということで京都の起業家教育情報ポータル、KYOKARAはスタートします。当面、ゼミ活動の主軸として運営したいとおもっています。

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