起業家インタビューvol.1 学生団体「NiCHiBle」代表/辻優力(つじゆりき) ②

龍谷大学の昼休み。龍大生たちは昼ご飯を求めてテントに長い行列を作っている。
列のその先にあったのは現役大学生の辻優力さんの運営する「きょうパン」だ。
この記事では辻さんがなぜ大学生にもかかわらずパン屋を大学で出店するようになったのか。
そのいきさつについて今回はインタビューをしてきた。

学生団体「NiCHiBle」代表/辻優力(つじゆりき)

龍谷大学経営学部3回生。現在は「NiCHiBle(ニチブル)」という学生団体の代表を務める。
そのきっかけとなった団体「きょうは、パンにしようか(通称:きょうパン)」の2代目代表も務める。

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ー「きょうパン」は現在活動休止中とのことですが、今後活動再開の予定などはありますか

 「きょうパン」はありがたいことに大学内での認知度は上がってきています。インスタでは、「きょうパンの再販待っています」「大宮キャンパスや瀬田キャンパスにも来てください」と、違うキャンパスでも知名度はあるんですよね。
 ただ運営資金や活動自体も僕たち学生のため、団体としての資金が少ないことが課題です。もし再開するとしても、パン屋さんからパンを卸して販売する、という以前と全く同じ形式で販売することは恐らくないと思います。ですが新しい形で再開できるように模索中ですね。

ー新規事業をどういった思いで立ち上げたのですか

 この新規事業は「きょうパン」とは別物になるのですが、「きょうパン」の元メンバー3人で何かできないかと考えてたんですね。そんな時に以前から規格外野菜や廃棄野菜のフードロスについてぼんやりは知っていたんですよ。運が良いことに具体的に数値やどういった問題があるかを授業内で調べる機会があったんですね。
 個人的に調べて興味が湧いたので、伏見や京丹後の農家さんに実際にお話を聞いて、「どういった規模感でフードロスが出ているのか」、「農家さんが直面している問題と課題」、「どういったことを消費者に伝えたい」とか、そういう農家さんに実際にお話を聞いて色々感じて、小規模ながら自分にも何か出来る事があるのではないか、と考えることが増えてきたんです。
 そして、僕も含めたきょうパンの元メンバー3人で立ち上げたのが、「NiCHiBle」という団体になります。今は新メンバーも迎え入れ、計7人で活動しています。

ーどうして「NiCHiBle」という団体名なのでしょうか

 「NiCHiBle(ニチブル)」はよく日常の「日(ニチ)」とベジタブルの「Ble」との造語ですか?と聞かれるのですが、「Ble」はその通りです。
 「NiCHi」に関しては初め、ビジネス用語の「niche(ニッチ)」からとりました。「niche」って経営用語で「隙間」という意味で、生物学上では「生息地やくぼみ」とかそういう色んな意味があって、そういったニッチな規格外野菜や廃棄野菜の生息地をつくりたいよいう思いから浮かびましたね。加えて、「niche」って綴りでは「e」なんですけど僕たちの「NiCHiBle」は「i」なんですよね。
 マニアックな野菜たちがもっと日常に溶け込んでほしいっていう意味も込めて、あえて「niche」の「e」を「i」に変えて日常の日「nichi」と掛けました。

ー大文字や小文字が混在しているのに意味がありそうですね・・・

 大文字や小文字がバラバラな理由は、規格外野菜や廃棄野菜と実際のスーパーの野菜が食卓に並んだ時の、野菜たちの見た目を表現するためですね。あと最後の「ble」はベジタブル以外に規格外野菜や廃棄野菜でも食べられる「able」からもとっていて、そういった色々な理由から「NiCHiBle」と名付けました。

ーではそんな「NiCHiBle」の事業内容を教えてください

 現段階では、廃棄されてしまう野菜や規格外のものを利活用したメニューでキッチンカーと間借りで提供する内容になります。今後は実店舗化やそのような野菜を取り扱って新たな面白い事業が展開出来ればなと考えていますね。
 学内ではキッチンカーでメニュー化したものを販売します。間借りに関しては、伏見の「じねんと市場」という直売所で使われていないキッチンがあって、そこで不定期に出店させてもらっています。

ー野菜を売るのではなく料理にした理由はありますか

 規格外野菜がふんだんに使われた料理を、日常的な行動の「食べる」を通して、身近に食品ロスやフードマイレージ問題など様々な問題を感じてもらうきっかけ作りになってほしいという思いからです。

ー 現在の活動において苦労したことや達成感を教えてください

 農家さんとの提携や仕入れなどはきょうパンのころの経験があったので割とスムーズに行きましたね。やっぱり一番難しかったのはキッチンカーの手配です。キッチンカーは飲食店の営業許可証が必要なので、行政や保健所にその書類提出の諸々をしたりと、大学側に納得していただけるように僕たちの思いや条件などを伝えて、了承をもらったことですね。

ー最後に学生たちにアドバイスをお願いします

 大それたアドバイスはできないんですけど、個人的に一番大事だと思うのは、1日1日を過ごしていく中で常に知的好奇心を持つことだと思います。
 例えば、大学の授業、バイトなど与えられた業務を日々何も考えずこなすだけでは、何も成長はできないと思うんですね。そのアルバイトの中でも「どうしてこの業務を行うのか」「もっとより良い方法が自分にあるのではないか」など常に疑問を持つこと。
 また、お店に行ったとしても「サイゼリヤはどうして安いのに赤字にならないのだろう」など周りに好奇心を持って、その持った好奇心を研鑽し、自分の知識として磨き上げて、自分に落とし込んで、アウトプットして初めて何か大事なものが生まれると思っています。
 あとは自分のマインドセットとして自分の人生を他人に任せない、日常の中で常に自責の精神を持ってほしいですね。

ーインタビューは以上になります。本日は貴重なお時間ありがとうございました。

 こちらこそありがとうございました。

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